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ぽかぽか おひるね

まるマシリーズの二次創作小説、有利×ヴォルフラムメインの小説サイトです。

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有利の悩みと初デート 2

 ここ最近、渋谷の悩みようったらない。今回こちらに喚ばれた理由が溜まりに溜まった書類のせいだと言うのだから、外政的にも内政的にも問題がある訳でもないので、比較的穏やかに毎日を過ごしているように見える。
 ……脳筋族の彼が、書類に埋もれて大変だなぁと同情はするけれど。でもその執務で疲れた様子とは別問題だ。あれは、ただ単に書類との格闘で消耗している、というだけでは無い筈だ。確実に、今、彼には悩みがある。遠い聖砂国の地でフォンビーレフェルト卿とようやく思いを通じ合わせ、幸せに向かって驀進(ばくしん)中の筈なのに。
 大体、こっちに流れ着いた時の二人の再会の様子なんて、見てらんないくらいだったんだ。フォンビーレフェルト卿が相変わらずの口調で、長く留守にした事をきゃんきゃんと責め立てていても、彼のその頬が染まりきっている事からちっとも渋谷には効果が無いようだった。その証拠に、はいはいと相槌(あいづち)を打ちながらも、渋谷は顔中緩みっぱなしだったんだから。僕が溜息付いて「けっ、やってられないよ、まったく」ってつぶやいたって、お互いに夢中の二人には、僕の事は全く見えても聞こえてもいないようだった。
 こんな事なら、渋谷に付いて来るんじゃなかった。体中がかゆくなるような、そんなやり取りを見せ付けられる位なら、クリスマスに向けてバイト探しでもした方が良かった。って、それだってどうせ彼女ができる訳ないし、作る予定もないんだから、バイトで稼いだお金でプレゼントを贈る相手 って渋谷以外に思い付かないんだけれど。
 ……そんな寂しい年末を過ごしたとしても、あんな二人を見ずにいられるのならその方が良かった。城中の者達が一斉に「か・ゆ~~~~~~い!」と頬を赤らめながら体中をかきむしっているのを見て、なぜかダカスコスだけが「どうだ、みんな思い知ったか!」と嬉しそうに涙を流しながら、首と背中と脇腹をかいていた。
 その上、今回渋谷がここに喚ばれた理由が「大量の書類の処理」と来れば、僕には何の関係も無い。本気で来なけりゃ良かったと、ほとほと後悔していたんだ。
 
 それなのに。こちらに来て、一週間も経たずに渋谷の様子が変わって来た。食事中もぼうっとしているし、執務にも身が入らないようだ。フォンクライスト卿が「陛下、何かお悩みがおありなのでしょうか?」と訊いたらしいが、首と手をブンブンと勢いよく振って「い、いえ、そんなモノは、全然、全く、ありません、いやホント!」と即座に否定され、脱兎の如く逃げられたらしい。
 そう言えば昨日なんか「ぼくに隠し事をする気か! 何か悩みがあるなら言え!」と怒鳴りながら、フォンビーレフェルト卿が渋谷を追い掛け回している声とドタバタと走る音がどこかから聞こえて来てたな。
 
 まったく、愛しの恋人にも言えない悩みって、なんだ?
 フォンビーレフェルト卿絡みの事か?
 それなら、まぁ頷けるか。
 当の本人に言えないのは当たり前だし、恋人のお兄ちゃんに話すなんてもっての他。
 しかも汁だくの王佐に打ち明けたら城が水没するかも知れないしね。
 ……ここはひとつ、僕の出番かな。
 なんで今回、僕も一緒に来ちゃったんだろう、僕が必要な事態なんて何も無いのに、って思ってたんだけど。
 そうか。
 この為だったんだな。
 さすが、誰かさんは気が利いてる。
 先の先まで読み通す力は凄いね。
 とりあえず大賢者に与えられた役をこなすとしますか。
 
 という訳で、考えた作戦がコレ。
 名付けて、『魔王の悩みを見極め隊!』
 隊員は、僕とグリエ(強制参加)だ。
 
          ** ** **
 
「どう思う、アレ」
 僕は後ろで馬を操るグリエにこっそり声を掛けた。馬に乗れない……って言うか、こんな山道では、馬を操る事ができないのは僕だって渋谷と同じなんだけど、僕の場合はほんのたしなみ程度で大丈夫なので、ここまで訓練する必要は無いんだよね。だから僕は今、グリエの馬に同乗させてもらっている。グリエの腕の中に守られて、渋谷があそこまで怖がっているこの山道も、そんなに恐ろしくは思わないでいられている。
 一応、今日は渋谷とフォンビーレフェルト卿のデート、という事なので、あんまり邪魔しないようにと思って、少し離れて進む事にしたんだけど……渋谷の馬が亀の歩み程度の進み具合なので、うっかりすると僕らの馬はすぐに彼の愛馬に追い付いてしまいそうになる。
 彼の馬は非常に利口だ。主人の恐れをよく感じ取っていて、少しでもその恐怖心を減らそうと気を付けて歩いている、とグリエが言っていた。なるべく崖から離れて山側の方を歩いているし、震動を与えないようにしているようだし、ゆっくりゆっくり進んでいる。
 そう言われてみると、本当に馬が渋谷を気遣っているように見えるよ。それなのに、当の渋谷ときたら、文句だらけ、不満だらけ。
「どう思うって、陛下の事ですかぁー?」
「うん。今日の目的は、まず第一が渋谷の気分転換。第二が渋谷の悩みを見極める事。もしかしたら、第一の目的が果たされたら自動的に渋谷の悩み自体が解消されるかも知れない、なんて希望も少しはあるんだけど……。
 それにしても、渋谷のあの顔ときたら! どーんと落ち込んだり、不満げな顔をしたり、かと思うとニヤニヤへらへらと笑っていたり、急に怒った表情したり……まったく、どーなっちゃってんだろうね!?」
「まぁ、人生経験豊富なグリ江が見たところ、早い話が“恋の悩み”なんじゃないかしらぁ? あんな風に、ニヤけたり落ち込んだり不安げだったり、そんな時は決まって恋に溺れてる時なんだからぁ」
「そんなのは判ってるんだよっ。渋谷が生まれて初めて恋人ができて浮かれてるって事くらい、城中の者が知ってるじゃないか。そうじゃなくて……一口に“恋の悩み”ったって色々あるだろう? ましてや、あんなにクソ幸せそうなのに何を悩んでいるんだか、まったく」
「ははぁーん、なるほどねぇ。でもそんなの、いちいち他人が口出しする事じゃないんじゃないですかぁ? 勝手にやらせとけば良いでしょう。下手に首突っ込んだらエライ目に合いますよー?」
「……そんな事は解っているんだけどね……渋谷がふわふわと浮かれてたりドーンと落ち込んでたり頭ガリガリ抱えてたりするもんだから、フォンヴォルテール卿の眉間の皺が一層増えてイライラしっぱなしで政務が滞っているらしいし、フォンクライスト卿は汁を垂れ流したり奇声を発したり室内を突然駆け回ったりの奇行に走ったりするらしいし……。
 そんなこんなで、フォンクライスト卿の愛娘が僕に嘆願しに来たんだよ。王の悩みを聞いてくれないか、って」
 眉間の皺がヒクついて一触即発な雰囲気の上司の様子に、周りの部下達がわたわたおろおろとしている様を思い出し、更に、尊敬する養父の取り乱した姿に、なだめてもぶち切れても効果がなくて困り果てた、美しい癒しの女性の涙を思い浮かべ、僕は隠す事も無く大きな溜息を付いた。
「ははぁ、そーだったんですかぁ」
「ああ、もう! なんでこんな損な役回りなんだ! くそぅ、こうなったらきみも巻き込んでやるからね! 色々と協力してもらうよ! こんなバカな事、一人でやってられるか……!」
「うへぇ、勘弁してくださいよォ」
 ちょっと茶化すように楽しげに言う護衛を振り返ってギロリと睨(にら)んだ。
「問答無用。僕に見込まれたからには覚悟を決めてもらうよ。逃がさないからね。まずは今日中に、渋谷の悩みがなんなのかきっちり見極めないと……」
 随分先の方から「ユーリ! 遅いぞ、早く来い! この程度の山道、颯爽と登れなくてどうする!」と活を入れる声がした。


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Comment

Re: こんにちは 

こんにちは、みつさま、はじめまして!
ようこそおいでくださいました。
心よりお礼申し上げます♪
o(*^ー ^*)o

素敵なもの、と仰っていただけて本当に嬉しいです!
これからも頑張りますねww
☆⌒(*^-゚)v

さてご質問の件ですが…。
大変申し訳ありませんが、「小説家になろう」さん関連は全て、
二次創作作品が閲覧できなくなってしまいました。
現在第4章をちまちまと移転作業中ですので、
お読みになりたい作品ももうしばらくお待ちいただけたら
このブログから読めるようにしたいと思っています。
時間がある時に頑張って作業をしていきますので、
ご迷惑をお掛けしますが、どうかよろしくお願いいたします。
m(_ _)m

どの作品も、悩みに悩んで苦労を重ねて書き上げた、
私にとっては大事な可愛い作品たちです。
興味をお持ちくださり「読みたい」と仰っていただけたこと、
心から嬉しく思っております。
本当にありがとうございます!
.。゚+.(´▽`)。+.゚+・゜

またどうか遊びにいらしてくださいませ。
お待ちしておりますね☆
m(_ _)m
  • posted by みんみん 
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  • 2012.08/26 22:32分 
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  •  
  • 2012.08/26 20:20分 
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フォンビーレフェルト卿ヴォルフラムを心から愛する主腐です。

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